SPECIAL

エンディングテーマアーティスト THE SIXTH LIE スペシャルインタビュー

――TVアニメ『ゴールデンカムイ』のEDテーマを担当することが決まったときの心境を教えてください。

Arata(Vocal) とにかくびっくりしました。事務所からその話を聞いたときは、メンバーみんなで、ヤバイね、と。
Reiji(Guitar) 原作の『ゴールデンカムイ』はマンガ大賞2016も受賞したことがあるビッグタイトルですが、対して僕たちはまだほとんど知名度がない状態だったので、本当にびっくりで。
Ray(Drum) 僕は普段漫画やアニメにあまり触れていないのですが、そんな僕ですら名前を知っていた作品ですからね。本当に驚きましたし、時間が経つにつれて、すごい作品に関わらせてもらえたことをどんどん実感するようになりました。電車に原作の広告がたくさん出ていたり、新宿駅に杉元とアシ(リ)パと白石の大きな看板が出ているのを見たときに、これのEDをやるんだなと(笑)。

――原作を読んだときの感想を教えてください。

Reiji 第一印象は、めちゃくちゃ渋い漫画だと思いました。さらに読み進めていくと、面白いキャラクターがどんどん出てきて。そこが魅力だと感じました。
Arata なんだか独特なテイストだよね。
Reiji そう。笑っちゃいけないようなシリアスな状況なのに、笑わせてくるようなところもあって。あの感じがすごく面白い(笑)。
Arata これまであまり感じたことのない、新しい笑いのツボを刺激されるような感覚がありました。そういう新しさが、現代の読者に合っているんだと思います。

――個人的に刺さった笑いのポイントはありますか?

Arata 勃起ネタです。
一同 (笑)。
Reiji あれは単なる下ネタじゃないんだよね。
Arata うん。美学みたいなものだから。
Ray 変態の描かれ方に狂気を感じますよね。
Reiji 安直な変態じゃなくて、本気の変態って感じ。
Ray どうしたらこんな人が育つんだろう? みたいな(笑)。一方で、アイヌの文化を徹底的に調べて描かかれていることもわかりますし、そういう要素がひとつにまとまっているのもすごいなと。原作のキャッチコピーで「和風闇鍋ウエスタン」と言われているだけのことはあります。
――EDテーマは曲と詞のどちらを先に作られたんですか?

Ray 僕らはいつも曲が先ですね。
Arata 作曲はすべてReijiがやっているので、バンと投げちゃいます。
Reiji 漫画を読んだときに、全体的に生と死に彩られた儚い印象を持ったんです。なので、疾走感がありながらも儚さを感じられるメロディにしました。そうやってまずはこちらでバチバチに作り込んで、あとは歌詞だけ付けてくれという感じです(笑)。
Ray Reijiの才能を信用しているので、僕らはいつもなにも言わないですね。今回の曲は想像以上に疾走感があって、最初に聴いたときは、めっちゃOPっぽいと思いました(笑)。
Arata ストレートでポジティブな感じのロックというより、ダークな雰囲気がけっこう強く出ているんです。個人的にそういう曲が好きなので、めちゃくちゃ格好よくて好みだなと。

――サウンドの面で、これまでにない試みのようなものはありますか?

Reiji 『Hibana』のようなロック・テイストの曲自体が、THE SIXTH LIEとしては珍しいんです。常にサウンド・クオリティを重視した曲を作ってきたバンドだからこそ、こういった一筋縄ではいかないロックを作れたと思っています。ストリングスの感じや隠し味として入れた電子的な音など、このバンドならではの強みも活かしつつ、新しさを感じさせる曲にできたのではないかと。

――その曲にRayさんが歌詞を付けていったわけですね。

Ray はい。候補となるフレーズを思いつく限り並べて、そこから使うものを厳選していくんですけど、いつもだとメロディに合わせて自分の書きたいことをどう落とし込むかでけっこう悩むんです。でも、今回は原作があったので、その面での苦労は少なかったかもしれません。

――今回のEDテーマでは、どのように作詞を進めていったのですか?

Ray 原作を読みながら気になったキーワードを全部書き出して、そこから連想される言葉を詞にはめていきました。キーワードが「狼」なら、「吠える」とか「遠吠え」といった具合ですね。このアイヌの考え方は参考になりそうだな、とか、この主人公の心情は面白いな、などと感じたこともメモして、その中のいくつかを反映させたりもしています。例えば、サビの「いつかまた、ここに来るんだ」という歌詞は、アイヌの宗教観にヒントを得ているんです。あとは、全体的に原作の世界が白い世界と赤い血、火が散っているイメージだったので、歌詞からもそれが感じられるようにしました。タイトルの「Hibana」もそこから来ています。

ーーArataさんとReijiさんは、今回の歌詞についてどんな印象を持ちましたか?

Reiji めっちゃ『ゴールデンカムイ』じゃん! と思いました(笑)。世界観を体現していて、本当に作品のイメージまんまだなと。
Arata 歌詞に初めて目を通すときは、いつも自分なりに意味を読み取りながら歌い方をイメージするんです。この曲については、荒々しくも儚さを感じさせるような歌い方ができればと思いました。

――実際に歌うときに重視している部分を教えてください。

Arata やはりサビ全体ですね。とくにサビの頭と終わりはレコーディングでもかなりこだわって何テイクも録った記憶があります。
Reiji 歌い方がいつもと違うよね。
Arata うん、全然違う。電子音を前面に出した曲が多いバンドなので、普段はそれに合わせてもっとクリアな声色で歌っているんです。今回は荒々しさを出すのを自分の中でのテーマにして、意図的に声をひずませるような歌い方にしました。
Reiji そういう歌い方じゃないと、メロディのほうが強くなっちゃうんだよね。がなるというか、ちょっとハードな感じを出したほうがいい。
Ray 歌詞を書く段階で、Arataからすでにそういうオーダーもありました。サビはシャウトっぽくがなって歌いたいから、あまり柔らかすぎる音を続けないでほしい、と。それも踏まえて、サビに「ぶつかって」のように攻撃的なフレーズを入れたんです。
Reiji そういえば、シングルのカップリング曲になっている『Flash of a Spear』でも、同じ歌い方をしているよね。
Arata そうだね。せっかく一緒に収録するのであれば、両方とも杉元を憑依させてやろうかなと(笑)。

――EDアニメーションの映像をご覧になったときの感想を教えてください。

Arata 曲と映像がこう合わさるんだ、と感動しました。それに、実際に映像を目にしたことで、アニメのEDテーマになったことをより強く実感しましたね。
Reiji 実は完成版を観る前に、色の付いてない映像に曲を合わせた状態でサウンドチェックをさせていただいたんです。そのときもすごいと思ったんですけど、完成版を観たときの感動はそれとは比べものにならなかったですね。
Ray やっぱり色が付くと印象が全然違うよね。
Reiji うん。曲が始まってすぐに、青い炎が舞い上がるところがすごく好きです。あと、EDでもふざけてる白石はすごいな、と思ったり(笑)。
Ray しかも、歌詞がちょうど「痛みも全部受け取って」のところで、タヌキに頭を噛まれた白石が出てくるという(笑)。僕は美術館が好きでよく行くんですけど、前半の油絵っぽい背景を観たときは、ゴッホの絵だ! と思いました。そんなことを考えているうちにサビになって、曲が一番盛り上がるところで自分の名前がクレジットに出てきたときは嬉しかったです(笑)。
Reiji 後半の「火花が今、散った」という歌詞のところで金塊が飛び散るのも、曲と映像のタイミングがバッチリでしたね。
Arata 金塊を散らすならここしかないって感じ。個人的に、EDの映像で一番テンションが上がるところですね。そのあとの、杉元とアシ(リ)パが見つめ合う表情。ファンの中にも、あそこでキュン死する人がけっこういるんじゃないかと。
――放送も中盤に差し掛かりましたが、本編をご覧になっての感想を教えてください。

Reiji 毎週楽しみに観ています。放送前から声優さんもチェックしていたのですが、重鎮の方がたくさん名を連ねたすごいキャストですよね。
Ray 原作を読んだときは尾形が格好いいと思っていたんですけど、アニメを観てからは鶴見中尉を超格好いいと思うようになりました。出てくるたびに、めちゃくちゃテンションが上がります。あと、土方も格好いいですね。
Reiji 僕も土方は格好いいと思います。味方でも敵でもないキャラクターが好きなので。ああいう立ち位置にいるキャラクターって、絶対に超強いじゃないですか。
Arata たしかに。僕が好きなのは尾形ですね。やっぱり狙撃手は格好いいです。それに、他のキャラクターとは違う天才感があって、そこもヤバいなと。
Reiji 普段のArataって、しゃべるときのテンションが尾形っぽいよね。
Arata そうなの(笑)?
Reiji うん。どこかミステリアスな感じがあって、尾形感を醸し出してる。

――どのキャラクターもキャストの声がハマってますよね。

Ray そう思います。とくに鶴見中尉は、声が付くことで狂気じみた感じがより一層強調された印象です。
Reiji 僕らが言うのもおこがましいですが、原作を読んで想像した声との違和感が全然ないんですよね。
Arata アニメになって印象が強まったものと言えば、食事シーンもそうですね。原作を読んだときから飯テロ感がありましたが、色が付くとさらにヤバい。リスの脳味噌とか食べてみたいです(笑)。
Reiji Arataは内臓を使った料理とか好きだよね。
Arata うん。ホルモンとか白子とか(笑)。あと、鹿刺しを食べたこともあります。アイヌ料理もいつか食べてみたいですね。
Ray 味噌を持っていかないとね(笑)。

――『Hibana』のシングルCDが発売になりますが、制作されてのご感想はいかがでしょうか。

Reiji CDの盤面がめっちゃ格好いいです。
Ray 囚人の刺青とTHE SIXTH LIEのロゴが合体したデザインになっているんですよ。
Arata 同じデザインのタトゥーを入れてー、みたいな(笑)。
Ray 杉元に剥がされちゃうよ(笑)。盤面だけでなくブックレットやMVも『ゴールデンカムイ』のイメージで作られているので、そっちもチェックしていただきたいですね。
Reiji 潔いほどの『ゴールデンカムイ』押しになってます(笑)。
Arata ポスターに金色を使っているのも、僕らとしては珍しいんじゃないかと。
Reiji 実はEDテーマの『Hibana』だけでなくカップリング曲の『Flash of a Spear』も、『ゴールデンカムイ』のイメージで書いた曲だったりします。白石が脱走するときの疾走感をメロディに落とし込んだ、いわば白石のテーマ曲なんです。
Ray キャラソンみたいな感じだよね。白石ファンは必聴です。
Arata カップリングは別にタイアップじゃないんですけど、勝手に『ゴールデンカムイ』のイメージで作っちゃったという。
Reiji せっかくなので、独自にコラボさせていただきました(笑)。

――今後の活動にフィードバックできそうなことはありますか?

Ray 第三者目線で物語を解釈して、それをもとに歌詞を書くのが得意だと気づきました。これまでの曲はほとんど英語で詞を書いていて、ぼんやりとテーマを浮かべながら書くこともあれば、映画をたくさん観ることで作り上げたイメージを歌詞にしたりしていたんです。今回のように原作があって、しかも全部日本語で詞を書くのは初めてでしたが、すでにある物語をテーマにして書くほうがやりやすいと感じました。いつかまたこういう機会があると嬉しいですね。
Reiji ロックな曲を作るのは単純に楽しかったですし、完成したものにも手応えを感じています。ここまでギターを前面に出した曲は初めてでしたが、おかげで曲作りのバリエーションを増やすことができました。この曲がきっかけになって、今後はロックっぽい曲がレパートリーにどんどん加わってくる可能性もありますね。
Arata 僕は幼少の頃にアニメのOPやEDにすごく影響を受けたので、そのときの初期衝動を思い出すことができました。あの作品のあの曲はすごく格好よかったな、なんて思い出しながら、自分が同じ場所に立てたことがすごく嬉しくて。この曲を聴いた人にもそういう衝動を与えられるよう、この先も頑張っていきたいです。バンド全体としても、これまでにない面白い曲ができたと思うので、今後の自分たちにもすごく期待感を持っています。
――最後に、今回のEDテーマでTHE SIXTH LIEを知った方々に向けてメッセージをお願いします。

Arata 『Hibana』のような荒々しくも美しい曲だけでなく、今までやってきたエレクトリック・サウンドを取り入れたきれいめな曲もTHE SIXTH LIEの得意とするところです。そちらもぜひ聴いていただければと思います。
Ray 僕は好きなアーティストのライブをよく観にいくんですけど、ライブだと歌詞や曲の余韻の感じ方が全然違うんです。とくに曲の余韻はライブならではのものがあるので、『Hibana』を気に入ってくださった方はぜひライブを観にきてください。6月24日開催のShibuya REXでのワンマンライブでは、『Hibana』もやります。なんだか告知みたいになってしまった(笑)。
Reiji THE SIXTH LIEの曲には奥行き感があるので、きっと聴けば聴くほどハマってもらえると思います。『Hibana』以外の曲も聴いていただいて、なにかひとつでも好きになってもらえたら嬉しいです。さっきは少し含みのある言い方をしましたが、今後は『Hibana』のような曲も増やしていきます、とここではっきり宣言します(笑)。ぜひこれからもチェックをお願いします。

list page