SPECIAL

このキャラクター、要注目につきッ!!
キャストインタビュー Vol.2
[鶴見中尉役]大塚芳忠

――本作の印象を教えてください。

 台本を読みながらストーリーやキャラクターを把握しているところですが、すごく面白いですね。今回こうして鶴見中尉の役をいただいたのをきっかけに、小学生の頃に『コタンの口笛』という小説を図書館で借りて読んだときのことを思い出しました。なにぶん昔のことなので詳しい内容までは記憶していないのですが、アイヌの迫害と和解を描いた物語で、すごく面白くて興奮しながら読んだ覚えがあります。僕にとってはそれがアイヌの文化に触れた初めての経験で、おかげでアイヌの知識を少しばかり持っていたんです。この作品に出させていただいたことで、50年も前の興奮が蘇りました。何か縁のようなものを感じると同時に、いい役をいただけたな、と思いましたね。

――鶴見というキャラクターの印象を教えてください。
 いわゆる僕のよくやらせていただくタイプのキャラクターなんですけど、狂気と野心に満ちている一方、戦友思いなところもある人物で。とにかく興味が尽きないですね。しかも、頭蓋骨から汁まで染み出しますから(笑)。その描写だけで全体の人柄が見えてくるようなところがあって、芝居のアイデアもたくさん湧いてきました。おかげでどう演じようかと困るようなこともなく、ワクワクしながらやっています。

――鶴見役を演じる上で、とくに意識していることはありますか?

 最初からわかりやすく狂気を前面に押し出すのは面白くないので、序盤は静かに演じるようにしています。鶴見は理知的な人だし、過去にいろいろあったようですからね。静的な状態から、怖いのかな、怖いのかな? と思わせた挙句に、本性があらわになるような盛り上げ方をしていきたいと思っているんです。

――大塚さん自身も、鶴見がこの先どんな風に変わっていくのかを楽しみながら演じていらっしゃるんですね。

 そうです。どうせ最後は大変なことになりますから(笑)。なので、序盤は最大値の10分の1ぐらいに抑えて、徐々にギアを上げていこうかと。あとは、行動の裏には緻密な計画がある人物ですから、それがちゃんと伝わるような芝居を心がけて、将来の展開にうまく繋げていければと思っています。

――難波(日登志)監督や音響監督の明田川(仁)さんからは、演技について何かオーダーはありましたか?

 特別なかったですね。強いて言えば、モノローグのセリフで感情がだんだん高揚していく部分にもっとメリハリを付けてください、というアドバイスをいただいたくらいです。

――アフレコ現場の雰囲気はいかがですか?
 
 とにかく落ち着きます。僕もいろんなアニメに出させていただいていますけど、最近はどこのスタジオに行っても最長老で(笑)。この作品は同年代の方や、洋画の吹き替えをずっとやってきた人たちばかりなので、ホームグラウンドに戻ったような感覚があります。無駄話や世間話もいっぱいできるし、楽しいですよ。芝居の面でも、何十年も一緒にやっていると、お互いがどんな出方をするのかだいたいわかりますしね。キミはそうやるんだろ? だったら俺はこんな感じで受けるよ、という具合に、阿吽の呼吸みたいなものができているんです。

――シリーズ序盤で、キャラクターの魅力や存在感を出すために重要だと感じたセリフはありますか

 やはり芝居のイメージをつかむ上で大きなヒントになった、頭蓋骨から汁が出るときのセリフでしょうか。こういう男は最高だな、と思いながら、とても楽しく演じさせてもらいました。この仕事をしていると、ちょっとしたことがセリフのヒントになったり、人物像を把握するポイントになったりするんです。ですから、その時々に感じたことを逃さないように、これだ! と思ったらしっかり食らいつくように気をつけています。
――大塚さんはこれまでも狂気をはらんだ悪役を多数演じられていますが、鶴見というキャラクターはまたひと味違いますか?

 違いますね~。悪役を演じさせていただくことが多いので、似通ってしまったらどうしようと思っていたんですけど、そんなことは全然なかったです。これまでやらせていただいた複雑な内面を持つ役の中でも、こういうタイプの人物は初めてですね。明治時代の人間を演じる機会もそうあるものではないですし、非常に興味深いです。セリフを言うときも、僕なりに当時を生きた人間であることを意識するようにしています。

――アニメの放映はまだ始まったばかりです。最後に、ファンへのメッセージをお願いします。

 『ゴールデンカムイ』は、業界歴の長い僕でさえ初めて経験するようなタイプの作品です。近代日本の原点ともいえる明治時代やアイヌの文化を知るきっかけにもなりますし、新しい視点をたくさん与えてくれると思います。実在した人物もたくさん出てきますから、興味を引かれたら、さらに本を読んで知識を深めるのもいいかもしれませんね。知的好奇心を刺激する要素が詰まった作品というだけでなく、もちろんストーリー自体も純粋に面白いです。きっとこの先もいろんな展開が待ち受けていますので、1秒も見逃すことなく最後まで観ていただきたいと思います。

list page